皆さま、こんばんは!ソプラノ 倉本絵里です!

早いもので《北国のフィガロ》初日・大入の公演からもうすぐ二週間が経とうとしています。

先日は私の大好きな“ヒカリ”(照明)のお話しをしましたが今日は舞台美術と衣装そしてヘアメイクに関するお話しを、本当に少しだけ。
(際限なく語れる自信がありますので、自制心をもってお届けします!)





hitaruオペラプロジェクト第一回公演《フィガロの結婚》、舞台美術を担当くださったのは松生紘子さん。
私は東京で、彼女の作るオペラの舞台をそれはもうたくさん拝見してきました。
いつもアイディア満載のステージで、緞帳が上がるたび、会場に足を踏み入れるたびに『あぁ、美しい!』とため息させられてしまいます。

今回の舞台稽古スケジュールにおいては私たち2月28日出演組がまず初めに舞台でのお稽古(KHP_カーハーペー_独語:Klavierhauptprobe)を組まれていました。

初めて舞台を目にした時の衝撃!
美術の美しさ。
無駄なものが一切なく、しかし、これまでのお稽古で私たちが作ってきたキャラクターたちの生きてきた時間がギュッと凝縮されたセットが目の前に、足下に、壁に、天井までそびえ立つ冬のポプラの木に、そして何よりも《北国のフィガロ》を象徴する黄金の馬車に表現されていて、私はちょっと泣きました。
この空間で生きることができる一週間と少しがどんなに幸せなものであるか、すぐに分かったのですもの!
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☆札幌文化芸術劇場hitaru 公式SNSより


実際に何度かの舞台稽古を重ねるうちに舞台と自分が馴染んでいく感覚がはっきりとありました。
ここで日々の仕事をこなしながら愛する人と語らったりキスをしたり、上司たちや悪戯っ子たちに振り回されたりしながら生きているスザンナに育ててもらっている感覚が自分の内側から湧き上がってくるのを、静かに感じ、受け止め、リリースすることができたと思います。



次にヘアメイク。
濱野由美子さん・野村麻由美さんを中心にたった4人でキャスト・合唱・ダンサーのヘアセットとメイクアップを担当・監修し、どんなにお忙しくても『いってらっしゃいっっ!』とステージへ送り出してくださいました。

これは本当に驚異的なことです。
上記全ての人数を合わせると一公演でその数56名。衣装の早替えもとんでもなく多い演目(演出)でしたが、私が走り込む袖中やセット裏には常に待機してくださってしっかりと綺麗に直していただいて…。
さらに。
稽古から本番中、そしてそこから一週間ほど経つまで気が付かなかったのですが(大変失礼いたしました!)、スザンナのカツラ(ヘアスタイル)に関しては26日と28日で前髪や後毛など、形をガラリと作り変えてくださっていました。こんなことをしていただいたのは初めてです。
愛しか感じません!!
ありがとうございました!!!!!

(23年4月9日追記)
東京でスタッフさんに再会する機会がありました。
26日スザンナはカツラではなく地毛であの素敵なスタイルを作っていらしたそうです!
それぞれのキャストの顔や頭のつくりに合わせることはもちろん、プランナーの意図を汲み取り、且つその歌い手が表現したいことを理解し最大限に引き立たせること、それは誰にでもできることではありません。
濱野由美子さんここにあり、といった超一級の仕事です。
愛、愛、そしてプロとしての信念!!
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☆出番直前。こだわりの後毛の形状キープのために右耳にピンが付いているのはご愛嬌!


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☆前髪も、クルクルで動くたび・走るたびに私のうなじを叩いてくるポニーテールも、大きなリボンも。
こんなに【可愛い】が集まったヘアメイクは私には畏れ多い!と、はじめはちょっと恥ずかしかったのですけれど、どんどん大好きになることができました!





最後に衣装。
坂井田操さんと岡本嚇子さんらアトリエスピカの皆さま。こちらもたった4人だけで、一体何着の衣装、何足のシューズ、いくつの帽子やヘアアクセサリーを作成・管理・着せて脱がせて直してまた着せて。それを何日続けてくださったことか!

スザンナはとてつもなく動きの多いキャラクターです。
どんなに動き回っても歌うこと・演じることに集中できように常に気にかけてくださって、最後の最後まで改良を重ねてくださいました。

そしてなんといってもあの美しいウェディングドレス!
あのドレスは着ている私だけではなく、会場にいる全ての人を幸せにしてくれたと思っています。
精魂込めて、愛情いっぱいに生み出し仕立ててくださった衣装の数々をいかに美しく捌いてヒカリの中を生きていくのか、そこも私たち歌手の腕とセンスの見せどころ。
頂戴した情熱と愛に全身を包んで舞台を走り回ったあの時間は私の宝物です。
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☆写真左からバルバリーナ矢野愛美さん、マルチェッリーナ 小平明子さん、アルマヴィーヴァ伯爵 門間信樹さん、倉本絵里、伯爵夫人役 石岡幸恵さん。
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☆本当に序曲の一瞬だけのために着せていただいた衣装。スザンナ in セヴィリアver.




プロフェッショナルな仕事に支えられ、守られて、カーテンコールの最後の緞帳が降りるまでを過ごしました。
そう感じていたからこそ私は、私がスザンナではなくなるその最後の一瞬までプロのオペラ歌手 倉本絵里であり続ける事を諦めることはできなかったし、そうする責任と義務があると心に刻んでステージに立ち続けました。
これからも、チャンスをいただける限りここだけは執着してやっていこうと思います。





オペラはさまざまなプロたちがその仕事を全うすることで成り立つ総合芸術。
そこには人間どうしの確かな信頼と愛情のやりとりがあるからこそ、誰かの心を揺さぶることができる。
いただいた愛と恩は必ずお返しします。
それが明日であるか、5年後であるか20年後になるかはわからないけれどその時のために、絶対に、忘れません。
この場を借りて、私の心からの感謝をスタッフの皆さまへ。
ありがとうございました。
またご一緒できるその日まで!!





ではまた😘