皆さま、おはようございます!ソプラノ 倉本絵里です!

IAW主催《カルメン》の本番まで今日を含めてあと3日というところまできました。
今日はコセフィル・オペラバンドとのオーケストラ合わせの日です。
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☆一昨日の夕空

厳しすぎる残暑もすぎて(東京は今日明日がまだ少し暑くなるようですが)、朝晩はとても涼しくなり夜のオペラ公演を見たあと、心地よい風に吹かれながら一杯やるにはとても良い季節になりました。
私が出演するのは17時開演回、まだチケットのご用意が可能です。是非ご連絡くださいませ!




さて、ここまで何度か書いておりますとおり今回が私のオペラ《カルメン》そしてミカエラ役のデビューとなります。
初作品・初役はとても緊張しますし、経験豊富・百戦錬磨の共演者の皆さまに囲まれると不安になることも多くあります。

しかし、逆に良いこともあるのですよ。
何にも縛られることなく全ての事柄にシンプルに【疑問を持つ】ことができること、です。

どうしてミカエラはここでこんな風に言うんだろう?
ホセとミカエラの関係はどの程度のボディタッチがある距離感なのだろう?
この言葉にこの音がついて、フレーズの最後にはここに行き着くのはなぜなんだろう?

初役でなくとも【疑問を持つ】ことは常に行わなければならないことですが、分かったつもりになってしまうことも多々あります。

考える・調べる・想像する楽しさが来て、
実現する難しさに苦しんで、
その先にやってくる声と身体と心の一体感に飛び上がるほど嬉しくなる。

それが初役・デビューの良さです。





さて、今回のブログタイトルを〈人間としての!〉にしたのは。
今回挑戦する【ミカエラ】という役を私がどのように考えているのか、文字に起こしていま一度客観的に捉えてみようと思ったからです。

ミカエラ(Micaëla)のその名は大天使ミカエルから来ています。
P.メリメが書いた原作には登場せず、H.メリヤックとL.アレヴィが書いた台本に付け加えられた登場人物。
原作にあまり表れない(と私は思う)清らかさ・崇高さを表現するためのキャラクターであることは間違いないでしょう。
《カルメン》において【神の世界】を担う彼女だけれども、果たして【天使】なのだろうか?
ただ純真で清らかで神を信じることだけを貫く女性なのだろうか?



嫉妬などの暗い感情を持たず、ホセとホセの母を心から愛し、神への祈りのみで生きている純真無垢・清廉潔白・強い心を待ち何にも惑わされない人物。
私はそうではないと思うのです。

ホセがカルメンに魅入られてミカエラや彼の母から離れていくその様子をオペラではホセやカルメンたち盗賊集団の登場するシーンを繋いで物語を進めています。

しかし、それと並行してミカエラが生きる世界(村)での時間も、当たり前ですが、進行しています。
村には優しい人ばかりではないでしょう。婚約者をジプシー女に奪われた哀れな女、選ばれなかった女、あの娘が神の意思に背くようなことをしているからこんなに酷い目にあっているのではないのか?などと陰口を叩く者もきっといたはず。

ミカエラはどこにでも存在するごく普通の人間であり、特別な女性ではありません。
いくら信仰心があったとしても、この状況に少なからず迷ったり怒ったり泣いたり、どうして自分をこんな目に遭わせるのか、と神に対して思ってしまってもおかしくはありません。

現に、一幕ではホセをVous(親しみある敬称のあなた)と呼ぶのに対し、登場しない二幕を過ぎ、次に姿を見せる三幕では呼称はTu(もっと砕けた呼びかけ)に代わり、アリアの中ではcelui que j’aimais jadis(私がかつて愛した男)とホセを表します。

ミカエラもまたホセと同じように、今まで接したことのない世界、ジプシーたちの生き方・愛し方に直接ではないにしろ触れることで、変わったのです。
その変化は村で幸せに暮らしていたミカエラをとても苦しめたと思います。
無知な自分を突きつけられ、新しい価値観に戸惑い、触れたことのない存在に恐怖する。会ったことはないが皆が口を揃えて美しいと讃えるカルメン、ホセに選ばれた女をどこかで羨ましく眩しくさえ思ったかもしれない。
けれどそれは神に背く行為・考えなのではないか、こんな自分を神は守ってくださるのだろうか。

あぁ誰か、私を許して、守ってください。

第三幕の美しいアリアの中で、盗賊や暗い場所での危険から守ってほしい、という言葉の裏側に私はそんな叫びを聞くのです。
彼女の惑い、心からの慟哭、苦しくとも自らに(神から)課せられた使命を果たそうとするミカエラの決意がこれでもかとぶつかり合っていて、咽せ返るように苦しくなります。
(歌は苦しくないように歌っています!)


三幕フィナーレ、予期せぬタイミングでホセと再会したミカエラは彼に彼の母親のことを思い出すように、母親があなたに手を差し伸べている、と言って自分と共に村に帰るように言います。

ここがまた、少しミカエラの人間臭いところであるような気がしています。
というのも。
結論から言うと一悶着あったあとにようやく『あなたの母親はいま死の床に伏していて、それでもあなたに許しを与えずには死なない、と言っているのです』と伝えるのですが。
私からすると、いやいやいや、それを一番初めにホセに伝えたらいいんじゃないの?と思ってしまうのですよね。

どうにかしてホセを彼の意志で村へ帰そうとしていると考えることもできますが。
私にはホセを試しているような、少なからずまだ彼が自分の言葉になら耳を貸すだろう、自分はカルメンに負けてなどいない、という女としてのプライドのようなものも感じてしまいます。
考えすぎ?苦笑

結局は女としてホセに愛されることよりも自分の使命を全うし神の意思を伝えることを選択せざるを得なかったミカエラは、その瞬間に真に強い女性となります。
けれど。
このオペラの第四幕(ミカエラは登場しない)、そしてカルメンが死にホセが捕まったあともきっと、ミカエラは一人心の傷を抱えたまま救いと許しを与えてくれる何かを求めて生きていかなくてはならないのだと思うと、とても切なくなります。何ひとつ悪いことをしていないのに絶望を味わった彼女が心の平安を手に入れることを強く願います。





…あぁ、いつもながら考えをまとめるのも、文章にするのも下手くそで嫌になってしまいます。
要するに何が言いたいのかと言うと、私は今回のミカエラを人間臭く、泥臭く、描いていきたいと思っているということです!

私の挑戦を四谷区民ホールで応援いただけたら嬉しいです!
ではまた😘